フランチャイズの複数店舗経営で失敗する人には、ある共通のパターンがあります。私(富永)自身、整体FCで1店舗目が月商300万円と好調だったにもかかわらず、多店舗展開で3,000万円以上の借金を抱えて撤退した経験があります。「1店舗うまくいったから次もいける」——この思い込みが、どれほど危険か。身をもって知っています。この記事では、5ブランドのFC加盟経験と失敗の実体験をもとに、多店舗展開の落とし穴と、後悔しないための考え方をできるだけ正直にお伝えします。
なぜ1店舗成功したのに複数店舗経営で失敗するのか

「1店舗目がうまくいったから、同じようにやれば大丈夫」——この感覚、覚えがありませんか?
めちゃくちゃ多いんです。そして私もまったく同じ罠にはまりました。
整体FCに加盟した1店舗目は、スタッフ2人で月商300万円を達成。整体業界ではスタッフ1人あたり月商90〜110万円が安定ラインと言われる中で、かなり好調な数字でした。1年間で利益も約1,000万円出て、「これはいける」と確信していたんですよね。
ただ、ここがミソで。1店舗目の成功には「再現性のある要因」と「たまたまの要因」が混在しています。立地の良さ、スタッフの個人的な実力、開業タイミングの運——これらは、次の店舗にそのままコピーできるものじゃない。なのに当時の私には、その区別ができていなかった。
1店舗目の成功体験は、むしろ慢心を生む危険がある。これが多店舗展開失敗の、本質的な入り口です。
もうひとつ、見落としがちなのが管理コストの急増です。1店舗なら自分の目が行き届く。スタッフの状態も、売上の動きも、現場の空気感も全部わかる。でも2店舗、3店舗と増えると、経営者の時間と注意力は物理的に分散します。管理の質が下がると、スタッフのモチベーションも下がる。退職が出る。採用コストがかさむ。売上が落ちる——この悪循環に入ったとき、複数の固定費(家賃・人件費・ロイヤリティ)が重くのしかかってきます。
多店舗展開を考えるなら、まず「1店舗目の成功要因を言語化できているか」を自問してほしい。再現できる要因だけを抽出できていれば、次の出店の精度はだけで全然変わってきます。
複数店舗経営で資金が底をつく「運転資金の罠」

運転資金、ちゃんと計算できていますか?
ぶっちゃけ、これが一番やばい。
多店舗展開で失敗する人の大半が、運転資金の計算を甘く見ています。私もそうでした。
2店舗目以降の出店費用は用意できていても、「開業してから軌道に乗るまでの間」の資金を十分に確保していないケースが本当に多い。整体FCでいえば、初期費用だけで約1,000万円かかります。でもそこに加えて、軌道に乗るまでの3〜6ヶ月分の運転資金——家賃・人件費・ロイヤリティ(本部に毎月払うお金のことです)——を手元に持っておかないと、売上が想定より低かった月に即死します。
止まらないんです、本部への支払いって。売上がゼロでも、ロイヤリティの最低保証額が設定されているFCも多くて、赤字の月でも一定額を払い続けなければならない。これ、加盟前に見落としている人が本当に多い。
私の場合、4店舗目が売上不振に陥ったとき、すでに他の店舗の運転資金も綱渡り状態でした。そこに社員の退職が重なって、採用・教育コストが一気に発生。気づいたときには手元資金がほぼゼロで、借入で補填するしかない状況になっていた。
新店舗ごとに最低6ヶ月分の固定費を運転資金として別に用意する——家賃・人件費・ロイヤリティの合計を月額で出して、それを6倍した金額です。「そんなに用意できない」と感じるなら、出店のタイミング自体を見直すべきだと私は考えています。
出店コストだけ計算して、運転資金を後回しにするのは絶対にやめてほしいです。
ロイヤリティの仕組みや負担感についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。
あと余談ですが、FCによって広告費の本部分担金が別途かかるケースがあります。「ロイヤリティ以外は自由」と思っていたら、毎月の広告費分担で想定外の出費が続いた——なんて話もよく聞く。契約書の細かい費用項目は、本当に隅々まで確認してほしいんです。
スタッフ問題が複数店舗経営を崩壊させるメカニズム

「人が辞める」問題、なめていました。本当に。
1店舗目のときは、スタッフ2人と毎日顔を合わせながらコミュニケーションが取れていた。不満があればすぐ察知できたし、モチベーション管理もできていた。でも複数店舗になると、店長やスタッフとの距離が物理的にも心理的にも広がります。
多店舗展開では、優秀なスタッフへの依存リスクが一気に高まります。1店舗目で活躍してくれていた人を2店舗目のマネージャーにした途端、1店舗目のパフォーマンスが落ちる。これもよくあるパターンです。
あなたはどうですか?スタッフが「あなたがいるから頑張れる」という状態で経営できていますか?
それ自体はありがたいことだけど、多店舗になった瞬間、そのモデルは崩れます。「人」に依存した店舗モデルのまま多店舗展開するのは、爆弾を増やしているようなものです。
FCの本部サポートが充実しているブランドなら、スタッフ教育の仕組みや研修制度が整っていることがある。SVサポート(スーパーバイザーが定期的に店舗を訪問して経営支援してくれる制度)の質が高い本部であれば、店長育成を一緒にやってもらえる。本部によって天と地ほど違う——これ、加盟前には絶対に確認してほしいポイントです。
加盟前に「スタッフ教育のマニュアルと研修体制を見せてください」と本部に聞いてみる。ここで曖昧な返答が来るようなら、多店舗展開の難易度が跳ね上がると思っておいた方がいいです。スタッフ育成がカギになります。
本部のサポート体制をどう見極めるかはこちらの記事にまとめているので、参考にしてみてください。
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契約書に潜む「撤退リスク」を見落とすな

契約書の撤退条項、最後まで読みましたか?
複数店舗を経営していると、1店舗を閉めたいタイミングが必ず来ます。売上不振、スタッフ問題、立地の問題——理由はさまざまです。でもここで、契約書の内容が経営者の首を絞めることがある。
読んでいない人が多い。これが怖い。
撤退時に問題になるのは主に3つです。
まずは違約金の条項。契約期間中に途中解約した場合、残存期間分のロイヤリティ相当額を一括で払う契約になっているFCがあります。「やめたいのに、やめるためにお金を払う」——理不尽に聞こえるかもしれないけど、そう書いてあれば従うしかない。
次に原状回復費用。内装を全部元に戻す費用は、業種によっては数百万円に達することがある。FC加盟した内装工事のときに特殊な造作が多いと、その分撤退コストも上がります。
そして連帯保証の問題。法人で加盟していても、代表者が個人として連帯保証に入っているケースは多い。1店舗撤退したときの借入残高が個人に跳ね返ってきます。
経営者保証ガイドライン(経営者個人の連帯保証を外すための指針)を活用することで、保証を切り離せるケースもあるので、借入の際は金融機関に必ず確認してほしいです。
加盟するときに撤退条件を読む人は少ない——でもここを読んでいないと、後でとんでもない金額を請求されることがある。
契約書は必ず弁護士か、FCに詳しい中小企業診断士に見てもらう。費用は数万円かかっても、それで数百万円のリスクが防げるなら安いものです。
多店舗展開を成功させるために本当に必要な準備

準備できていると言い切れますか?
ここまで失敗パターンばかり書いてきましたが、多店舗展開がすべてダメだと言いたいわけじゃないです。ちゃんと準備をして臨めば、FCの多店舗展開はほんとに再現性の高いビジネスになる。私が3,000万円の借金を経て思うのは、「順番を間違えなければよかった」ということです。
まずやってほしいのは、1店舗目の収益だけで借入を完済できる状態にしてから次を考えること。1店舗の黒字で手元資金が積み上がっている状態が、多店舗展開の最低条件だと思っています。
次に、FC加盟時に使える補助金を最大限活用すること。小規模事業者持続化補助金や、自治体独自の創業補助金など、開業資金を一部カバーできる制度は意外と多い。補助金は借金と違って返済不要なので、初期投資の負担を下げるだけで、複数店舗の運転資金に余裕が生まれます。
使える補助金の情報は、FC本部に聞くよりも自治体の創業支援窓口か、中小企業診断士に相談する方が正確なことが多いです。
あともうひとつ——これが一番効く。本部のサポート力を加盟前に徹底的に検証すること。既存加盟者に直接話を聞く、SVの訪問頻度を確認する、集客の仕組みが本部主導かどうか確認する。多店舗になればなるほど、本部のサポートの厚さが経営を左右します。
FC選びの比較ポイントについてはこちらの記事でチェックリスト形式でまとめているので、ぜひ使ってみてください。
答えはシンプル。準備と検証を省いたから、私は失敗した。それだけです。
フランチャイズの複数店舗経営で失敗する原因を整理すると、「1店舗目の成功への過信」「運転資金の甘い計算」「スタッフ依存のモデルのまま拡大」「契約書の確認不足」——この4つに集約されます。私自身がすべて経験しています。多店舗展開を否定したいのではなく、正しい順番と準備があれば、FCは十分に再現性のあるビジネスになる。1店舗目の利益で運転資金を積み上げてから動いてほしい。焦る必要はないです。借金3,000万円を抱えた私が言うのも何ですが——準備した人が勝てる世界が、フランチャイズです。
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よくある質問
Q. フランチャイズで複数店舗を経営するのに向いている人はどんな人ですか?
A. 1店舗目の成功要因を言語化できていて、スタッフ教育の仕組みを作れている人が向いています。「自分がいないと回らない」状態のままで出店すると、経営者の時間と体力が分散してどちらも中途半端になりやすい。仕組みで動かせる体制を作れてから次を考えるのが現実的だと私は考えています。
Q. 複数店舗展開をするとき、運転資金はどのくらい用意すればいいですか?
A. 目安は新店舗の固定費(家賃+人件費+ロイヤリティ)の最低6ヶ月分です。私は2〜3ヶ月分の計算で出店して痛い目を見ました。売上が想定の7割だった場合でも半年間持ちこたえられる資金があると、経営判断に余裕が生まれます。「足りなければ借りればいい」という発想は、雪だるま式に借入を増やすリスクがあるので注意してください。
Q. FC加盟の途中で1店舗を閉店したい場合、違約金はどのくらいかかりますか?
A. 契約書の内容によって大きく異なりますが、残存契約期間分のロイヤリティ相当額を請求されるケースがあります。期間が5年残っていて月10万円のロイヤリティなら、最大600万円の計算です。加盟前に必ず「中途解約時の費用条項」を弁護士や中小企業診断士に確認してもらうことをすすめます。
Q. 複数店舗経営でスタッフの退職を防ぐにはどうすればいいですか?
A. 店長クラスへの権限委譲と、本部の教育・研修制度の活用がカギになります。経営者が全店舗を管理しようとすると、各店のスタッフへの関与が薄くなって不満が出やすくなる。加盟前に本部のSVサポート(定期訪問・研修制度)の内容を具体的に確認して、スタッフ育成を本部と一緒にできる体制があるFCを選ぶのが現実的です。
Q. 1店舗目が成功したら、どのタイミングで2店舗目を出すべきですか?
A. 1店舗目の月次黒字が安定して12ヶ月以上続いていて、かつ自分がいなくても店舗が回る仕組みができているタイミングが最低ラインだと考えています。私は8〜10ヶ月程度の成功で2店舗目に動いてしまった。焦りが一番の敵です。黒字の積み上げで運転資金を確保してから動いた方が、結果的に早く複数店舗を安定させられます。

